常盤平蔵のつぶやき

五つのWと一つのH、Web logの原点を探る。

現場に出るといやでも現実に向き合う~ 「フィールダー」を読んだ

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新作という事で

「神前酔狂宴」が大変楽しめたので、同じ作者の新作「フィールダー」が出ていることを知り本屋で手にとってパラパラとめくっていたら気がついたらレジに持っていっていた。レジで本の値段を書店員に聞いてちょっとひるんだが、そのまま購入した。ハードカバーを本屋で買うというのはなかなかないことだ。しかし購入に踏み切った。なぜかといえば、今読みたかったからである。今というのはその場でということではなく、2024年の今、現在という時間の中で読んでおきたいと感じたからである。

 

 

フィールダーって何のこと?

カローラにそんな名前のモデルがあったが、今回この本の中で、フィールドワーカー、ワーカーが対象としているのがフィールダー、つまり現場にいる人、現場の人の事だとわかった。当事者と言い換えても差し支えないだろう。私自身フィールドワーカーとフィールダーの違いがよくわからなかった。両方とも同じくフィールド、現場にいる人なのではないかと思ったが、何か問題があって、それに対処する側ど、問題の当事者のことらしい。つまり犯罪で言えば、警察がフィールドワーカーで、犯罪者および被害者がフィールダーという事になる。この小説の中では、児童問題に関わる人がフィールドワーカーで、問題の当事者がフィールダーだ。
主人公はある出版社で、その出版社のオピニオンマガジンの編集者として働いている。恐らく、この本「フィールダー」自体を出版している集英社がモデルと思われるが、集英社は言わずと知れた「週間少年ジャンプ」の出版元である。物語の中にもジャンプを思わせる雑誌とその編集に関わる人達もでてくる。また、同じ出版社から出ている週刊誌部門の記者も出てくる。社会問題に向き合う内容の編集方針に従っている主人公は、漫画雑誌や、週刊誌が扱う内容に対して快く思っていない。なぜかと云うと、彼の生い立ちに理由があって、その事件以来人を助ける事に生きがいというよりも使命(十字架を背負っていると言ったほうがしっくりくるが)を持っているからである。

スマホゲームのフィールド(現場)

その主人公が心の拠り所にしているのがスマホのゲームなのだが、そこで主人公もフィールダーにならざるを得ない事態に見舞われる。ゲーム内容としてはパーティを組んでモンスターを倒すというところから「モンスターハンターNOW」っぽい感じだが、ちょっと違うオリジナルのゲームを想定しているようだ。そのゲームは4人一組のパーティとなり、モンスターを狩るゲームで、主人公の役目はヒーラーである。ファンタジー系のRPGゲームならクレリックとかモンクが担う役だろう。それ以外には主に攻撃を担うアタッカー、仲間を守るタンク、全体の戦術を指揮するリーダーの四つの役割分担で出来た小隊である。これって「機動戦士ガンダム 戦場の絆」の構成じやないだろうか?

ただし、タンクの役割が異なる。タンクは自衛しつつ拠点撃破を狙う職種なので、敵の攻撃を一手に引き受けて、みんなのダメージを減らすということはないが、絆の場合は拠点を落とすとチームに大きくポイントが入るので、別の意味で非常に重要な職種である。残念ながら、そこまでスマホのゲームを手広くやっていないので、実際にはこのゲームのことだよー!という明確なターゲットがあるのかもしれないが、私にはわからない。
話が逸れたが、主人公がヒーラーをやっているのにはキャラクターとしての意味があり、それは幼い頃のトラウマにある。詳しい内容は省くが、先ほども書いた通りそれがこのストーリーの中での主人公の行動原理になっている。しかし、それだけではなく彼も人に言えない秘密があって結局はそのフィールドに自分も出ていくことを決意する。

 

 

読み終わってみて

結局、フィールドワーカーであることからフィールダーになって現場、当事者になることが必要だとか、そういう教条的な話ではなく、最初はフィールドワーカーとして現場に立っていても、現場というものがフィールダーであることを要求するというのは、実際にどんな「現場」でも起こりうることなので、そんなに大げさに考えることでもないなと思った。この小説を読んで、気になったのでスマホに「モンスターハンターNOW」を入れてしまって、毎日の通勤がモンスターの跋扈するフィールドに変わってしまい、現場で武器を振り回しつつ、課金するかどうかフィールダーとして迷っている。