「やりなおし世界文学」紹介本シリーズ
今回も「やりなおし世界文学」紹介本である。この本の紹介しているジャンルは、いわゆる古典文学だけでなく、SFもいくつか入っているところが面白い。今回はその数少ないSFジャンルから選ばれている「ストーカー」を読んだ。
確かにこの「ストーカー」は、私がまだ中高生だったころに水色の背表紙の早川SF文庫にあったし、その当時からタルコフスキーの映画化によってアニメ雑誌やSF雑誌で言及されることがあったため、気になる本ではあった。今回早川が文庫全体で進めている新訳版によるリプレイスによって本も少しだけ背が伸びていて、本棚にあるとすぐ新版とわかるようになっているのもうまいと思う。しかし、世の中でストーカーという言葉が違う意味で使われてニュースなどで目にする機会が増えたからではないが、この作品の方はいつしか忘れてしまっていた。今回思い出させてもらう良い機会となった。
「ディスクロージャー・デイ」を観てしまった
実はこの本を読み終わってからスピルバーグ監督の「ディスクロージャー・デイ」を観た。日本公開が本国の公開から一か月以上後らされたのにはどんな意味があったのかはわからない。しかし、その間ネタバレ的な情報も特に入ってこなかったと思う。
その理由は、すでにスピルバーグがいつも言っているあの話がとうとう「絵」になったというだけだったために、あまりアメリカでも話題にならなかったのではないだろうか?
本来なら、ブログに単独で取り上げるレベルの尊敬する監督の最新作品であり、それを公開時に劇場で見るという体験は実は私の中でもかなり珍しいことなのではないかと思うが、なにしろ間が悪かった。なにがかというと、「ストーカー」読んだ直後にこの作品を見てしまったことがである。
ある意味ファーストコンタクトものという共通点はあるが、全く真逆の話になっている。かたや、友好的なのに隠されていた宇宙人、もう片方は、人類には全く関心がないし、もうすでに居ない宇宙人(?)の残骸が、超絶オーパーツばかりなので、訳もわからず死んでいく人達がいる中、命からがらそれらを持ち帰って、それを利用したり、売り買いしたりする人達の日々の奮闘を描いている。「裏世界ピクニック」の様に、オカルト的な世界観もない。この作品での来訪者は本当に謎だが、まったく次元の違う残骸を残していっており、その残置物をみるにつけ、イソップ物語のカエルの王様が言う「あなた方にとっては遊びだが、私たちにとっては死である」という言葉を思い出した。
「裏世界<ピクニック>」の元祖
まさにその「裏世界ピクニック」であるが、私は先にこっちを読んでいたので、まさかこの「裏世界」という世界観にルーツがあったというのは今回この「ストーカー」を読んで初めて知った。そう考えると、そのストーカーのロシア語原題が「路傍のピクニック」であることから、タイトルに「裏世界<ピクニック>」とつけているのは先行作品に対するリスペクトも入っているのだろう。裏世界の方では<グリッチ>と呼ぶ普通には知覚できない罠のようなものを、ナットを投げて探るという行為も、ゾーンにおけるストーカーの基本的なふるまいだったと思うので、そこにも先行作へのオマージュが感じられる。
また、ゾーンに入った人間が、逆にゾーンからも影響を受けてしまう部分も、本作ストーカーでは、全く意味不明で役に立たない、もっと言えば害をなすものばかりだが、裏世界ピクニックでは、裏世界に対する「<目>=観察」と「<手>=操作」を可能とする能力として、主人公たちに与えられることで、チートではないが裏世界での活動を一つ進んだものにできている。そういう意味ではゾーンに対する知覚や操作ができるような技術が、地球上の科学では全く出来ないというのも不思議だが、ストーカーのなかでは、ゾーン内部での物理法則レベルで異なるような世界観なので、とにかく来訪者という存在が、まったく次元の異なるところから、ただ一方的に通過していったということなのだろう。物語の中でも出てくるが、アリや虫のレベルで、人間が残した痕跡を理解することはないし、ましてやそこから何か有益なものを見出すこともあり得ないという構図を来訪者と人類に当てはめてみるしかないようだ。
キャラクター
主人公であるレッド(レドリック)という人間は、なぜかストーカーであることに対してある種のプライドを持っている感じだが、それがどこからきているのかはいまいちわからなかった。ある種の極限状態を知ってしまった人間(映画「ハート・ロッカー」の主人公とか)のようにゾーンでしか生きている実感を感じられなくなった人間なのかもしれないが、そのゾーン内での心情描写は本書の読みどころの一つだと思う。ロシア文学(そんなに読んだことがあるわけじゃないけど)的に人間の内面を克明に描写することで、小説世界が立ち上がってくる。
そのレッドの娘を<モンキー>と呼ぶのだが、その名前の由来は全身に毛が生えていて、レッドにまとわりついて饒舌にしゃべることからきている。これもレッドがゾーンに行ってから、子供を授かったことに関係しており、ゾーンから受けた影響が遺伝子レベルで作用していると推測させる。そして、物語の後半ではすでに言葉をしゃべらなくなり、医者曰く「すでに人間ではない」という状態になっていく。不気味な存在なのだが、それでもレッドは娘であり続けてほしいと思っている。
この話にはワレンチン・ピルマンという科学者が出てくるが、この人もゾーンに対する不可解さについていら立っているようである。一応話の中ではノーベル賞をもらった学者ということになっているが、彼の研究によっても全くその原理や目的が全くわからないようだ。物語の最初と最後のほうに出てくるが、最初に出てきたとき、<ピルマン放射点>という科学用語についての説明がある。地球の内部を貫通して入り口と出口がそれぞれ三か所ずつあるという説明で、それが地球の自転によってカーブを描いていると述べている。要するに来訪者の進路は地球が自転していること、もっと言えば地球がそこにあったことも全く意に介せず直進していったことを示している。そこまで別次元の存在というものを想像するという作者の感性に脱帽する。
そして、忘れてはならないのはHくんである。彼は午前中の授業と午後の遅い授業には出席していた。ところがその同じ日に200㎞離れた福岡で元カノに目撃されていたのである。私はその話を同級生から聞いた。確かのその当時のHくんはどこか遠い目をしていて、なんとなくこの世の理から離れているような感じだった…… え?いや、この本の登場人物の話ではなく、同級生で<ストーカー>になってしまった男がいたという話である。又聞きで聞いた元カノの証言は以下の通り。「学校からの帰り道H君によく似た人を見かけた気がするが、H君そっちにいるよね?ちゃんと学校行ってるよね?……」その話を聞いた時の戦慄した気持ちも思い出したので、ここに記載しておく。






![アベンジャーズ/エンドゲーム ブルーレイ + DVD セット [Blu-ray] アベンジャーズ/エンドゲーム ブルーレイ + DVD セット [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51mnl78qDWL._SL500_.jpg)





![[バンダイ(BANDAI)] ウルトラ怪獣シリーズ 02 ゴモラ [バンダイ(BANDAI)] ウルトラ怪獣シリーズ 02 ゴモラ](https://m.media-amazon.com/images/I/41GdEIa+AAL._SL500_.jpg)










![スリー・ビルボード [Blu-ray] スリー・ビルボード [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/517BG+Jh0NL._SL500_.jpg)