常盤平蔵のつぶやき

五つのWと一つのH、Web logの原点を探る。

自分の思春期を思い出してゾッとする~「アドレセンス」を観た

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日経日曜版の紹介記事

このドラマを見たきっかけは、日経日曜版に紹介されていたからだ。その紹介文の中に、イギリスの首相がこのドラマをイギリス中の子どもがいる家庭で無料で観られるようにしたという内容が書かれていた。このドラマの舞台はイギリスなので、行政が国民に「観たほうがいいよ!」というドラマとはどのようなものなのかという興味が湧いた。そこで早速観てみたわけだが、まずこのドラマはその撮影方法に特徴がある。一話がワンカットで撮影されているのである。いわゆる「カメラを止めるな!」である。このシームレスな撮影が観ている側に与える緊張感はちょっと独特である。観てる側はどんどんカメラの写す先が切り替わるので、なんとなく不全感などをためながら、少しずつ急かされているような気分になる。もっとその人物についても知りたいが、カメラの行く先にも興味深い事実が見出されるのではないかという期待もあるので不安定な気分のまま観続ける事になると思う。そのため、この事件に関してはすべて明らかになっていないのではないか? まだ隠されている事実があるのではないか? と思ってしまうわけだが、それについては後ほど述べることにする。

 

 

あらすじとネタバレ

ドラマの作り的にはサスペンスなので、まだ観ていない人にはネタバレは厳禁だと思うが、前段でも述べたように、強制的に切り替わる撮影対象のお陰で、情報に対する不全感がつきまとうため、どこか完全なものを見落としている(隠されている)のではないかと感じながら観ていたため、視聴者である私は勝手に提示された事実に対して疑問符をつけたまま観ていた。これが万人に起こることなのかはちょっとわからないので、そこも含めて観てもらうしかないが、仮にこの演出が私が感じたように、眼の前に提示された映像を疑ってかかることを視聴者に促している(ミスディレクションさせる)とすると、ドラマの中の事実はその反対ということになる。つまりネタバレすると、最終的に今まで見てきたことは全部(ドラマ上の)真実だったということがわかる瞬間がある。

 

欧米における非モテ、インセル

このドラマの主題はタイトル通り「アドレセンス」=思春期の少年少女たちを活写することにあるのだと思うが、思春期=さわやかな青春ドラマにならない現代の悲劇というか、ここにも持つものと持たざるもの、いや、モテるものとモテないもの差による分断が裏のテーマとして描かれている。第二話?辺で女性警官が捜査に来た中学校で教室のニオイについて辛辣なコメントをするが、それがこのドラマの特徴を簡潔に表していたと思う。

捜査の途上で警察官が自分の息子から教えられる「インセル」という言葉はもともと「インボランタリー・セリベイト(Involuntary celibate、不本意の禁欲主義者)」の略語である。日本語で言えば非モテとでも言うべき概念だと思うが、ちょっとはみ出す気もする。いや、そもそも筆者の若い頃と今では何かが大きく変わってしまったようだ。その変化の源はもちろんインターネット、ネット社会だろう。

ネット上ではインセルを表す絵文字(莢豆)や、インセルに目覚める(自覚する)ことを「ブラックピルを飲む」と表したりといろいろ調べると面白い事がわかったが、当事者にとっては面白いでは済まない深刻な問題だということが、このドラマの中心だ。

私とて、一歩間違えば主人公の少年のようになっていたかもしれないとも思う。だが、少なくとも私の若い頃には、もちろんネットがなかったことと、もう一つ逃げ込める概念があったと思う。それは「硬派」という言葉だが、この言葉を覚えている人はどれぐらいいるのだろうか……

 

マトリックス (字幕版)

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第三話がすごかった

正直第四話は必要だったのか?と思わないでもないが、ドラマの起承転結(もしくは三幕構成)的には最初に起こった息子の逮捕から、それを最後にその事実を受け入れてその後家族がどうなったというオチに戻って来るためには必要だっただろう。だが、個人的には第三話がこのドラマの真骨頂だったと思う。ほぼ二人の役者で展開される会話劇だが、犯人役の少年と、カウンセラー役の女性のやり取りをじっくり見せてくれるので、これまでのようにカメラが宙ぶらりんになって人から人へ飛び移っていくような不安定さはないが、ものすごい緊張感あふれるやり取りが行われて文字通り目を離せない。

女性カウンセラーが最後に呟く「なんてこと……」というセリフをどう解釈するかが結構難しいが、私はこのカウンセラーが驚くと同時に呆れているようにも感じた。ネタバレにならないように書くのは本当に難しいが、この犯人役の少年の演技が大変素晴らしく、本人としても思春期の年齢と思われるため、かなり実感を持って演じられたのではないかと思う。

結局のところ、全体を通してそのような時代を過ぎてしまった大人からみても、あの時代の危うさ、凶暴さを切実に思い出させてくれる良いドラマだった。