常盤平蔵のつぶやき

五つのWと一つのH、Web logの原点を探る。

流れよわが涙、とオーディオ素人は言った~ 「これならできるスピーカー工作2020」でスピーカーを作った。

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中学生が考える恋愛

NHK Eテレで放送している「ロッチと子羊」という番組で「恋愛とはなにか」について女子中学生が質問していた。ロッチの二人が、その質問に対してかなり含みのある笑顔をしていた。私も全く同感だった。含むところをあえて書けば「そんなの知りたいと思わなくてもいずれ嫌というほど知ることになるのに~」というところだろうか。番組の中での回答としてエマニュエル・レヴィナスの以下の言葉を引用していた。

 

~恋愛とは自分のものにならない他者に惹かれることである~

 

世界は自分と他者から出来ているとレヴィナスは言う。その他者の中に自分が惹かれるものが他人だったとき、そこに恋愛が始まるということだろう。私もまさにこの質問者の女子中学生ぐらいの年齢の時に突然気になって気になってしょうがない人が現れた。その衝撃は今も忘れない。もちろん自分のものにはならなかった。そもそも人はモノではないとはよく言われることだが、いずれにしても自分のものになるどころか、自分の人生に全く関わりのない人のままである。今ごろどこで何をしているのかも全く不明だ。花に嵐の喩えもあるぞ、さよならだけが人生だ。……というような言葉にできない経験をその女子中学生もこれから嫌でもするに違いない。幸運を祈るより他に言うことはない。

 

www.nhk.jp

恋愛とは官能の喜び

ちょっと話がそれてしまったが、それでは恋愛の喜びとはなんだろうか。私は、一言で言って官能の喜びだと思う。官能とは五感で感じること全てだと思う。五感というのは味覚、聴覚、視覚、触覚、嗅覚ある。これらを全て味わい尽くす事のできる対象といえばやはり異性だろう。私の若い頃は、異性というのは男にとっては女、女にとっては男だが、今はLGBTQ+まであるので、異性という括りはもはやあまり意味をなさないかも知れない。そういう意味ではレヴィナス先生が言っているように単純に他者と考えたほうがいいだろう。

ここからは個人的な嗜好の話になるが、私は五感の中でも視覚からくる喜びに一番強く反応すると思う。それは視力が良かったということも関係するだろう。しかし、近年は視力も老眼のために衰えてきて、嗅覚も毎年の花粉症にやられるためほぼ機能しない状態が一年中続くようになってしまった。残るのは触覚、味覚、そして聴覚である。アニメーションには声優が絶対に必要だが、この声優さんたちの声は独特で、官能としての聴覚を刺激する。聞いていて本当に心地良い声というのはある。まさに福音である。

 

官能としての聴覚

官能としての聴覚、喜びとしての音、そのための機械といえばオーディオである。せっかく自分の家、自分の部屋を手に入れたので、久々にちゃんとした音で音楽や映画を味わいたいと思い、PCやゲーム機にちゃんとしたスピーカーをつなごうと考えた。きっかけは以下の記事である。

 

av.watch.impress.co.jp

 

オーディオ関係のブログ、記事を読んでいると、例えばアンプを替えた、スピーカーを替えたら音が良くなったという内容の文章を書かれるが、その内容が非常に官能の言葉、感覚を言い換えた例えの表現、メタファーでほぼ全部が書かれており、数値的な変化や比較というものが殆どない(まず見かけない)ということに気がついた。やはり官能というのは数値で図れるものではないのだろう。文学的な言葉でしか表すことは出来ないのだと思う。

 

 

いざ購入!……

上記のリンクにある通りの構成で、購入しようと思ったのだが、やはりネットで情報が拡散すると、同じようなことを考える人がたくさんいるのだろう。まずAmazonFostexのアンプ「PC200USB-HR」はまごまごしているうちに売り切れてしまったようだ。仕方がないので、Fostexの公式オンラインストアから購入したら、すぐ発送されてきた。

 

 

 

Polkオーディオのスピーカー「ES10」の方は値段が高いためか、そう簡単には売り切れていないが、これもなんとか安く手に入れる方法はないかと考えて、そういえばマイナポイント第二弾でもらった1.5K円があるし、それを入れているJREポイントが使えるJREモールで買えないかと思って検索してみると、これもちょうどタイミングよくJREモールにビッグカメラが新たに参入していて、買えそうだったので早速注文してみた。ところが、納期が未定だという。

 

 

 

 

これでは当分の間手元にあるのはアンプだけになってしまう。一応このUSB-DACアンプにはヘッドフォン端子もついているので音を聞くことは出来るが、それでは今まで通りゲーミングヘッドセットで聞いているのと変わらないことになってしまう。そこでふと「なければ作ってしまえ」という天の声が聞こえたので、以前本屋でオーディオ関係の本を探した時に見かけた、表題のムック本を思い出したのである。

 

 

いざキット作成!……

というわけで、やっとタイトルの話になるのだが今回購入したキットは以下の2つである。

実は最初スピーカーユニットのキットだけを買って、これで完結するものだと思っていたが、スピーカーユニットが付録のムックは、一対のスピーカーユニットが入っているだけで、エンクロージャーは別にムックの付録になっているというオチだった。なので、あわててエンクロージャーキットのついた方も注文した。両方とも2020年のムック本なのはたまたまである。でも、未だにネットで検索すると在庫はあるようである。

キットといっても、カットされたMDF(木材を繊維に分解して樹脂で固めたもの)の板が入っているだけでそれ以外の副資材、たとえば接着剤や固定するためのクランプなどは自分で考えて用意しないといけない。(ムック本の中に必要なものは書いてある)私もキットが届く前にホームセンターへ行ってF型クランプを2本買ってきた。しかし、結果から言うとクランプは使わなかった。その御蔭でちょっとずれて接着された部分もあるが、でも全体としてはかなりきちんと組めていると思う。組み立てのやり方はムック本に設計者の丁寧な説明がついているので、その通りにやれば問題なく組み立てることが出来ると思うので特に書かない。MDFを木工ボンドで貼り付ける時に、しっかりと接着面に対して垂直に力をかけると面がちゃんと出ているので吸い付くような感触がある。そこで少しずれているとだめだが、吸い付かせたあとで少しずつ調整すると良いと思う。といってもずれ量が大きいと、吸い付きが消えてしまうので、できる限りズレないようにするのがコツだろう。全体の構造としては特に自分なりの改造や工夫というようなものもせず、全くの素組で完成させた。

 

いざ聴音!……

ムック本にも設計者の方が「完成したら素晴らしい音が待っています」と書いているが、いざアンプに繋いでPCでiTunesを立ち上げ、再生してみてその言葉に疑いがないことがわかった。本当に素晴らしい音だ…… 素晴らしい音? しかし、その上にはもっと素晴らしい音があるのではないだろうか? 究極のいい音ってなんだろう?…… はっ!!

この質問を己自身にした時に、私の中の「仮想オーディオマニア」が冒頭のロッチの二人の顔に浮かんだ笑顔を見せた。レヴィナス先生に聞くまでもなく「究極のいい音」というのは永遠に自分のものにならない。それを追い求めるのが、オーディオ沼に足を踏み入れることだろう。自分で組み立てたスピーカーから流れる音楽を聞きながら、恋愛とはなんですか?と無邪気に聞く女子中学生の澄んだ瞳が、閉じたまぶたの裏に浮かんだ。