常盤平蔵のつぶやき

五つのWと一つのH、Web logの原点を探る。

明日に向かって書け〜 「三行で撃つ」を読んだ

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○毎度おなじみ文章力上達指南の本です
「喰ってみろ、飛ぶぞ」は長州力が北海道名産のホタテ貝の美味さをアピールした言葉だが、私はこの本をこれから読もうと思う方にはこう言いたい。「読んでみろ、飛ぶぞ」と。
私を含め、文章が少しでも上手くなりたいという欲望を持つ人はこの世に沢山居る。その空腹(ハングリー)感を持った人たちにとって「(意識が)飛ぶほど美味いホタテ貝」にあたるものは、ズバリ読みながら感じる著者の熱量だと思う。
これも、実際にはこの本の内容の受け売りになるが、今や読者に訴えるものは、情報でも文章技巧の上手さでもなく熱量だろうと断言されている。それがまさしくこの本の中にはある。

 

 

○書くためには読むべし
タイトルにある通り「撃つ」事を比喩にしたアドバイスを25発ぶっ放すと言うことが書いてあるが、この撃つと言うアナロジーは文字通り散弾銃を撃つ事を意味している。この本の著者は猟師で、素人が鴨を一羽撃つためにだいたい25発は撃たないと当てられないと言うことから来ていると書かれている。
その25発の内容に関しては、私の下手な要約を書いて変な誤解を招くより、実際に本を手に取って読んでいたただいた方が良いと思うので一切書かない。
しかし、最後の5発に関してはプロ向けであり、その中に「本を読め。買って読め」と言うことが書かれている。
以前に感銘を受けたスティーブン・キングの「書くことについて」にも「私(キング)が許可するので、読みまくれ」と書いてあったが、やはり書くためには読まなければならないのは自明ことのようだ。
これは私も感覚的に実感していたし、現に新聞を取り始めて強制的に文字を読む分量が増えたことによって、文章を書く力が底上げされた感覚がある。

○夜中に降ってわいた敗北感
ここからは直接本の内容とは関係ないが、先日夜中に突然目が覚めた。その時の感情は一言で言えば敗北感だった。これまで五十三年生きてきてこんな思いに捕らわれたのは初めてだった。そして、その時感じた感情はそれを抱えては今後生きていくのがかなり困難になりそうな代物だった。
これが正に「死に至る病」絶望という奴なのかも知れないと思った。
その後眠って、朝起きてからいてもたってもいられない気分になり、ふと同じ著者の本を電子書籍で買ってあったことを思い出した。その本とは「あらすじだけで人生の意味が全部わかる世界の古典13」だ。
試しに読んでみると正に自分が知りたい事が書いてあるではないか!中でも私の敗北感を癒やすのに大いに効いたのは「第11章年をとることの意味を全て知る『ファウスト』」だった。
そこからわかったことは、私が夜中に感じた敗北感は、どうやら私がやっと普通の人間(大人)になったと言うことだと教えられた気がする。(自分で『ファウスト』を読んだわけでは無いのであくまで著者のあらすじによれば、だが)

 

 

○古典を読まなければ!
「三行で撃て」で読むべき本のリストとして上げられている本「必読書150」も近くの本屋やブックオフも回ったが売っていなかったので、仕方が無く図書館で借りてリストだけは書き写しておいた。
先ほどの「あらすじだけで……」の巻末にも古典の読み方(馬鹿のための古典読書術五箇条)という章があり、そこに先ず第一に古典文学を読む時間は一日15分で良いと書いてある。ただし、第二に、本を読む時間は一日トータル二時間はとれと書いてある。むむむ。
さらに、第三として本は同時に10冊読むべしとある。同時に10冊……?さすがに二,三冊なら並行して読むことはあるが、同時に10冊はやったことが無い。
第四として、読書ガイドは必須であるとのことだ。ここには先ほどの『必読書150』だけでなくモームの『世界の十大小説』なども上げられている。ちなみにその十大小説とは
・フィールディング「トム・ジョウンズ」
・オースティン「高慢と偏見
スタンダール赤と黒
バルザックゴリオ爺さん
・ディッケンズ「ディビッド・コパーフィールド」
フローベールボヴァリー夫人
メルヴィル「白鯨」
エミリーブロンテ嵐が丘
ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟
トルストイ戦争と平和
だそうである。この中で読みかけた(読んだではない)ことがあるのは「白鯨」だけだ。道は遠い。
更に第五として読んで、書くとあるが、この書くとは、読んだ本の心に刺さったフレーズを抜き書きするということである。自分に刺さったフレーズこそが、自分自身を表しているから、それを集めることで自分自身がわかるようになるという。
人生100年時代と言われるようになっているが、私自身はそんなに長生きするとは思っていない。(そういう人間に限って長生きするものらしい)
けれども、もし生きるとしたら、その時間を少しでも楽しむために古典を読み続けていこうと思った。その効用は「あらすじ」のお試しだけでも効果絶大だったのだから。