常盤平蔵のつぶやき

五つのWと一つのH、Web logの原点を探る。

「アナイアレイションー全滅領域ー」を観た

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〇かすかな記憶
前回のブログで、女優(ソノヤ・ミズノ)のつながりでこの映画にたどり着いたことを書いたが、しかしWikipediaでこの映画のあらすじを読んでいて何か聞き覚えがあった。それが映画ではなく原作本の話だと思い出し、基本読書のバックナンバーを検索してみたところやはり「面白い本」と言うことで紹介されていた。確かに、そのブログを今読んでも面白そうだし、これは観るしかないとおもってNetflixを立ち上げた。主演女優がナタリー・ポートマンと言うことに一抹の不安を覚えつつ再生を開始する。

 

 

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 ※この映画と同じ監督が撮った映画でした。これにソノヤ・ミズノが出ていて、ソノヤ・ミズノラ・ラ・ランドに出ていて…同じくラ・ラ・ランドジェシカ・ローテがでてたから「ハッピーデスデイ」につながる……

 

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〇導入部のあらすじ(ネタバレなし)
主人公のレナ(ナタリー・ポートマン)は生物学者で元軍人という不思議な(しかし日本の漫画やSFではよくある)設定だ。夫も軍人で、一年前極秘任務に出たまま行方不明になっていたのだが、突然戻ってくる。しかし何か様子が変だ。そう思っているうちにぶっ倒れたので救急車を呼ぶと、搬送中に警察の特殊部隊に捕まって謎の基地に連れて行かれる。その基地はアメリカのある場所で起きている怪異現象を解明するために作られた場所で、これまで何度も調査隊を送り込んだが、誰も帰ってこない。実は夫もその調査任務に行っていたことがわかる。自分自身もその調査隊に加わることを決意するレナ。しかしその調査の先に待っていたものは……という感じだ。

 

 

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ナタリー・ポートマンに対する不安はこの映画に由来している。いや、レオンのときは本当に可愛かったですよ。 

 

 

〇ここから先ネタバレになります
やはりストーリーのネタバレはミステリーの犯人を言ってしまうようなもので、作品の命を脅かす事になるのでやらない方がいいのではないかと最近は思っている。しかし、ここから先はどうしてもネタバレしないと書けないのであしからずご了承ください。(恐怖や謎を楽しみたい人は先に作品を観ることをおすすめします)
いわゆる全滅領域に入った調査隊は様々な現象に襲われる。この感じどこかで……とまた思い出したのが「裏世界ピクニック」だ。廃墟に探検に行き怪異現象に出会うと言う点ではこの二つ作品はどこかでインスパイアされたりしたりと言うことがあっても不思議ではない。(原作も同じ早川文庫から出ている)しかし「全滅領域」と「裏世界」はかなり似ていると同時に違う部分もある。その部分について書いてみたい。いろいろな点があるがその中からとりあえず、同じ要素としてはそれぞれが出会う「怪異現象」、似て非なる要素としては「百合要素」だが、それぞれに逆の要素もあると思う。

 

裏世界ピクニック コミック 1-4巻セット

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〇その一「怪異現象」
「アナイアレイションー全滅領域ー」も「裏世界ピクニック」も異界に入っていくと言う点では共通している。前者の方は「シマー」と呼ばれる光に包まれた領域、後者の方は「裏世界」あるいは「Ultra Bule World」と呼ばれる世界だが、そこでは空気もあり一応普通の物理法則も通用する世界だが、「シマー」のほうはあくまでこの宇宙と同じだが異なる力がやってきたという感じだ。「裏世界」のほうは似て非なる世界。逆に言えば似ているが異なるルールで出来上がっている世界という感じで、正に一見似ているように見えるがで本質的には全く別方向の世界設定だと思う。しかし、その世界の根本の設定は異なるが、物語の中盤に「人の形をした植物」が出てくるのを見たとき強いデジャブを感じだ。異世界の人間が空魚の右目でみるとそういう風に見えるシーンがあるのだ。日本には「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という言葉があるが、空魚の見え方はこちらに属すると思う。しかし、レナ達一行がみた「人間の形をした植物」はあくまでも遺伝子の中に人間の形を形成する要素が混ざってしまったからと言う解釈である。そして逆に隊員の一人は自ら植物になる事を受け入れて手足から葉っぱが生えてくる。これはギリシャ神話のダフネの話を彷彿とさせたが、植物に変わる隊員はアポロンからの求愛を拒んでいるわけではなく、そもそも自傷癖があり、人間である事を常々やめたいと思っていたような人であった。このキャラクターには空魚と少し共通点がある。空魚も一人で異世界に行く理由は、現実世界に居場所がないからだ。

 

 

 

 

 

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〇その二「百合要素」
レナ達一行が調査隊として行く前には男性の兵士ばかりが調査隊として派遣されていたよう(ここ確証ありません)だが、レナを含む五人は全て女性である。初めてレナが一緒に行く四人と出会う場面で、その中の一人の発言からその人物がLGBTである事が示唆されるが、レナ自身は結婚していたこともあるぐらいでそういう嗜好はなさそうである。しかし、五人が隊列を組んで進んでいくところを引いた絵としてみてみると、全員が女性というのはなぜだったのか?そこに明確な理由はなかったと思う。(原作には書いてあるのだろうか?)結論から言うとこっちの映画に百合要素はない。しかし、なぜ女性だけの編成にしたのか?には何かしら意味があったような気がする。劇中では、この調査隊に志願した四人はいずれも生きることに希望を持てない、自殺願望(人生を破壊したいという願望)のある女達という設定だった。この部分劇中で、隊長とレナが話し合うシーンがあるの間違いない。レナ自身も実は大学の同僚と浮気しており、それが旦那にばれている。そのため旦那(ケイン…俳優はオスカー・アイザックスターウォーズの789に出てきたパイロットでフォースのない人)に絶望されて、そのまま旦那は極秘任務で行方不明になって……というバックストーリーがあるのである意味レナも生きることに絶望しかけているのだろう。でも一縷の望みをかけて旦那との関係を修復したいと思っている。ここがレナだけが唯一シマーから帰還できた理由なのだろう。(その部分もラストシーンを見ると謎が残るが……)
一方、「裏世界ピクニック」では異世界に行く理由は、鳥子が愛する閏間五月を探すことだ。今のところその閏間五月がどうなったかは明らかにされていない。しかしその構図は現時点五月は不在ではあるが、空魚、鳥子、五月の百合的な三角関係になっている。

 

 

 

 

〇原作を読んでみたい
再び、最初の基本読書での紹介記事に戻るが、どうも原作はレナの一人称による語り(レポート?)の様だ。劇中でも最後にレナが隔離された部屋でインタビューを受けているが全てを見てきた後で語ると言う形式を取っているようである。つまり、映画だけ観ると収拾のつかない様に見えるシマーの拡大も、なんらかの結末を迎えるのかも知れない。しかし、「裏世界ピクニック」にも共通していることだが、恐怖というのは理解できないものに対する時最大になると思われるので、少しずつ解明が進むのは物語(異世界)の魅力を少しずつ減らすトレードオフと同義だろう。その部分をどのように書いているのかに注目したい。……それにしてもソノヤ・ミズノはどこに出てたのだろうか?

 

 

huyukiitoichi.hatenadiary.jp

全滅領域 サザーン・リーチ①