常盤平蔵のつぶやき

ものづくりからもの書きへの転身を目指す文章修行のブログです。

スティーブン・キングの「書くことについて」を読んだ

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この手の本はすでに何冊目だろうか?ここに書いていない本も含めて数十冊は読んでいる気がする。
もともとこの本は「月刊シナリオ教室」8月号のミソ帳倶楽部ダイジェストに紹介されていたので、手にとってみたのだが、久々に当たりだった。というか自分のスタイルに合っていると思った。

 

書くことについて (小学館文庫)

書くことについて (小学館文庫)

 

 


ここに記録していない本も含めて、小説の書き方や物語の作り方という本は、二桁は確実に読んでいる。二桁といっても三桁に手が届きそうな数ではないが、それでも、既に内容もタイトルも覚えていないようなものも合わせれば結構な数になると思う。しかしそれらを思い返してみてもこの人の言うことが一番しっくりきた。この人なんて恐れ多いが、実際に読んでみると前半部分の自叙伝的な部分、スティーブン・キングが作家になるまでの道のりで、幼少の頃からどのような人生を生きてきたかの部分を読むと、本当に親しみを感じるというのがわかっていただけると思う。初めて書いた本を母が褒めてくれたところや、兄とミニコミ誌を作っていたエピソードなど読んでいて胸が熱くなる事しきりだった。

〇書くことについて
高校の時にリスボンの週刊新聞の記者ジョン・グールドに言われたこと「何かを書くときは自分にストーリーを語って聞かせればいい。手直しをするときは余計言葉を全て削ることだ」更に含蓄のある言葉を口にしたと書かれている。曰く「ドアを閉めて書け。ドアを開けて書き直せ」だ。
これをキングが言い換えた言葉が「原稿を書き、完成させたら、後はそれを読んだり批判したりする者のものになる」ということだそうだ。
更に次の章(かなり短い)で「書くこととはーーーずばり、テレバシーである」と書いている。この内容もかなり私には合点がいった。
というのも昔、SFのような小説を書いていたとき(完結しなかったが)その当時の映画で「ブレインストーム」というのがあった。その映画の中で、脳から全ての情報をある機械で記録することで、それを他人が再生すると、自分がしているのと全く変わらない「体験」が出来るというものが出てきたのだ。実はこれが出来るのは文字を読む事だと思う。ここでキングが言っているのは、時や空間を超えて(時には言語の壁も超えて)外の人間に思っていることを伝えることが出来る道具が書物なのである。それを大変簡潔な書き方で示している。

 

ブレインストーム [DVD]

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〇金のために書いているか?
スティーブン・キングはこの質問に対してはっきりNoと書いている。当たり前のような気がするが、彼は金のために書いたことは一文字もないそうだ。純粋に喜びのために書くと。創作というのは絶対にそうだと思う。絵を描く人間も、楽曲を作る人間も、これがいくらで売れるからそれを創るということをしたら終わりだと思う。しかし、これはそれを商売にしようとすることとはっきりと矛盾する。
あらゆる仕事がそうであったらいいとは思うが、残念ながらそうでない仕事の方が多いだろう。すなわち、これをやったら幾ら貰えるのかがはっきりわかっている事をやるということだ。しかし、クリエイティブな仕事をするためには、その対照表(労働=対価)が先に見えたら終わりだろう。

 

〇地中に埋もれた化石のようなもの
スティーブン・キングは雑誌ニューヨーカーの取材で「ストーリーは地中に埋もれた化石のようなもの」と答えたそうである。それを掘り出すのには繊細な作業が必要であると。それに対してプロットで話を作ることは、その地中に埋もれた化石を削岩機で掘り出すようなものだと書いている。これも、なんとなくわかる気がする。いや、しかし本当になんとなくだ。シナリオセンターではキャラクター造形を第一にするべきと教えられる。しかし、キャラクターを創ることは、その人間が形成された環境を創ることになり、それはストーリーと密接に関係していると思う。卵が先か、鶏が先かという問題になってしまいそうだが、化石を掘り出すというメタファーから考えると、やはりそれは切っても切れないものであると思われる。恐竜の化石を掘り出すとき、その地層は恐竜が生きていた時代の環境も一緒に封印して埋設しているはずだ。従って化石を掘り出していることは、その背後の環境も一緒に掘り出すことになるだろう。

 

 

〇作家がしなければならないこと
作家になるのに絶対にしなければならないことが二つあるとキングは言う。それは「たくさん読み、たくさん書くことだ。私の知る限りその代わりになるものはないし、近道もない」と。そして更にこう書いている。
「信じられない話だが、本をほとんど、場合によっては全く読まずに小説を書き、それを好きになってもらえると思っているものが、この世には少なからずいる……(中略)……ここではっきり言っておこう。読む時間がないのに、どうして書く時間があるのか。単純明快である」大変耳が痛い。しかしその後で大変素晴らしい励ましを書いてくれている。
「心ゆくまで読んだり書いたりすることに、後ろめたさを感じている方がいるとすれば、私が今ここで許可を与えるので、どうかご心配なく」ありがとう!キング先生!これからはこころゆくまで読んだり書いたりします。