常盤平蔵のつぶやき

ものづくりからもの書きへの転身を目指す文章修行のブログです。

「ベストセラーコード」を読んだ

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なんとなくノンフィクション系の本を探すとき「HONZ」という本の書評サイトで探すことが多いのだが、そのサイトでこの「ベストセラーコード」が紹介されていた。そのことを知ったのはシナリオセンターのFacebookだったかもしれない。とにかく、最近はやりの深層学習やデータマイニングの一つであるテキストマイニングを利用して、ベストセラーになった本にはどの様な客観的な特徴があるかを、コンピューターサイエンスを駆使して明らかにすると言う内容だった。一通り読み終えたので感想を書くことにする。

honz.jp

この本を読んで見て改めて思ったが、本に書かれている文章というのは、ひたすら一列に並んでいる文字列というデータだ。一文一文はピリオドで区切られているから、行番号という括りもある。その行のある意味を持った集合が章になり、章の集まりが全体としての作品を形作っている。逆に文の中身を分解すると、名詞や動詞、形容詞、副詞など文法用語でグルーピングされた役割を持つ言葉の集合だ。

普段本を読んでいる我々人間は、そんなことを意識して読んでいない。単語から文、文から章、章から本全体の意味を細かい単位からその集合、さらにその集合という順に意味を抽出していき、本全体のテーマや本から受ける感想などを持つ。コンピューターのプログラムで言えば、実行された後の結果(出力)からそのプログラムの良し悪しを判断している。一冊の本は脳という演算装置の中で実行されて始めて意味を持つプログラムコードだ。

 

ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム

ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム

 

 

そこからこの本のタイトル「ベストセラーコード」は来ているのだろう。我々人間が脳の中で喜んで実行したくなるコードがその本の中に含まれていれば、たくさんの人がそれを求めて読む。その結果がベストセラーになる。この本ではアメリカのニューヨークタイムズ紙のベストセラーランキングを元に分析した結果なので、アメリカ人の脳が喜ぶコードの分析ということになる。そのまま日本の読者に当てはまるかどうかはわからないが、それは巻末の解説にも書かれているので割愛する。

#トピックについて
トピックの分析がまさにそれぞれの土地に住む人間の偏りによって一番影響される部分だと思うが、おそらく地球上にどの地域に住む人間にとっても絶対外せない項目として入っているのは「親密な人間関係」というトピックだろう。何気ない日常を描写する部分は作家によって異なるだろうし、その部分が実は読みたくてその作家を読んでいるのかもしれないが、実は本を手に取る段階ではその事を言語化出来ないようだ。それ以外の、その本の属するジャンルを決めているトピック、ミステリやSF、歴史、経済、スポーツなどが、普通は本を語る時の話題になる。しかし、そうではない「日常の描写」というトピック(に見えないトピックだ)が実はベストセラーになるかどうかにとって重要らしい。

#プロットについて
この本のおかげでおそらくベストセラーになった事自体が何かの間違いという評価で終わってしまったかもしれない本についての考察が書かれている。実際にアメリカでそうだったかどうかはわからないが、この本を読む限りその地位向上に大きく貢献しただろう。その本とは「フィフティシェイズオブグレイ(FSG)」である。この本がなぜ売れたのかは、テキストマイニングとパターン分析でなければ絶対に解明できなかっただろう。結論から言うと、先ほどのトピックで出てくる「親密な関係」がほとんどを占めている事とそのプロットラインが完璧だったと言う事らしい。

そのプロットラインに関しても七つのパターンが出てくるが、その部分がシナリオセンターの教えてる折れ線グラフの様な図と同じだと言う事から、やはり創業者の新井一が言ってることは正しかったと言う文脈で紹介されていたと思う。本の中でもクリストファー・ブッカーと言う研究者が数千冊の本を読んで独自に解析したプロットカーブのタイプ七種類と同じだったと言うのは、一人の人間の知能が弾き出した結果が、コンピューターによる解析結果を先取りしていたと言うことだろう。変な話だが信憑性が高いと感じる。

#タイトル、最初の一行について
この部分は、おそらく内部の分析の結果を一番端的に表していることだと思うが、主人公は能動的な動詞を使う人間でなければならないということが、その本の最初の一行から表されていると言うことだと思う。自分が売れる本を書きたいと思ったら、主人公にぐずぐずと迷わせている時間はないと言う事を肝に命じておきたい。

#最も理想的なベストセラーコードを持つ本について
これがデイブ・エガーズの「ザ・サークル」と言う本らしい。エマ・ワトソン主演で映画化も進行中だそうだ。先ずは「フィフティシェイズオブグレイ」を読んでからこの「ザ・サークル」も読んでみたいと思う。正直自分のツボはベストセラーになる本より少しずれているとずっと思ってきた。しかし、読む側から書く側になりたいと思う上では、やはりベストセラーになる方がいいわけで、そのために必要な情報は仕入れておきたいと思っている。決してFSGが「マミーポルノ」と呼ばれDBSMを扱った作品だからと言うことではないのである。

 

フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ (上) (ハヤカワ文庫NV) (ハヤカワ文庫 NV シ 28-1)

フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ (上) (ハヤカワ文庫NV) (ハヤカワ文庫 NV シ 28-1)