常盤平蔵のつぶやき

ものづくりからもの書きへの転身を目指す文章修行のブログです。

「ブレードランナー2049」を観た

 

  • 2017年11月3日に渋谷のtohoシネマズで観た。

それから既に3週間が経過しているが、未だにじわじわと感動が蘇ってくる。感動なのか、それとも今回の映画が現在の私にとって現実の写し絵のようになっていることからくるでデジャヴなのかはわからないが、生活の中で主人公であるKの哀しみと共振している自分に気がつく。この感情はなんだろう?(新潮文庫のキャッチコピーだが、ミスチルの歌の歌詞でもあるよね)

今回は前日にはブルーレイで前作を復習のため見直して、万全の体制で見に行った。

しかし、本当に長生きはするもんだ。まさかの35年経って続編が作られるなんて、夢にも思わなかった。先日みたコヴェナントはリメイクだし、エイリアンがネオモーフなど新しいものに置き換わっているし、何より出演者に連続性が無い。リプリーことシガニー・ウィーバーが出ていないのだ。

(ここからネタバレになります)
それにひきかえ今回の2049はハリソンフォードが出ているし、それ以外にもガフやレイチェルまでが出て来るのだ。オリジナルのブレードランナーと完全に地続きの世界の30年後なのである。いや本当に長生きはするものだ。
私も初めてオリジナルのブレードランナーを見たのは月曜ロードショーで荻昌弘が解説している回でみた。今はその解説もユーチューブで見られるのである。本当に長生きは・・・もういいか。

現実には35年経っているらしいが、劇中でも30年が経過しているのがひしひしと伝わってくる。埃を被ったポリススピナーがある!と言うのにひどく感動する。本当にそこに30年あった、あの前作のラストでレイチェルとデッカードはこれに乗って逃避行に出たんだという「事実」にジンとくる。

  • 主人公「K」

今回のライアン・ゴスリング演じる主人公、ブレードランナーである捜査官「K」は、物語の冒頭LA郊外の砂漠で農夫をしているサッパーを「解任」に行った際にサッパーに「新型」と呼ばれることで自分もレプリカントと明かされてしまう。サッパーはNexus8でタイレル社が作った最後のレプリカントモデルだ。それに対してKは倒産したタイレル社を買収して新型のレプリカントを製造する会社、ウオレス社のレプリカントなのだ。


これは前作ではデッカードが実はレプリカントなのではないかという観客の疑問を曖昧にしてきたこととは逆の構成だ。実際今回の映画でもデッカードは見かけは歳をとっているが、物語の後半、kとラスベガスの廃墟のホテルでkが冒頭のサッパーとやった戦いと同じようなタフガイぶりを見せる。つまり今作でもデッカードに対する疑惑は継続中なのである。
しかし今作の主人公Kの物語は、ここを出発点にして、でも実は人間なのかも?という謎かけがはじまるのだ。果たして捜査官Kは人間なのか?

個人的に大いにツボだったのは、警察署に戻って来たKが署長に会う前にテストを受けるシーンだ。感情を刺激する文言による質問とそれへの回答(セルズ!とかインターリンク!とか言う)総合的にどう言う状態かを反応速度?から測っているのだろうか?これは前作のVKテストの変奏なのだろう。VKは人間とレプリカントを見分けることのできる唯一のテストという設定だったはずだが、この続編では左目の白眼の部分に製造番号が入っている。そのため話の終盤に出てくるレプリカントレジスタンス?みたいな集団のリーダーは左眼をくり抜いていた。


恐らくKも左目に数字が打ってありそうなので、自分を人間だと思うならまずそこから調べると思うのだが、それはないということなのかな。それともレプリカントの子供はたとえ女性のレプリカントが産んだとしても、ちゃんと目には製造番号が刻印されて生まれてくるというのだろうか?後述するリドリースコットの生物学的理解と物語のセンスオブワンダーの部分は深いところで齟齬があるようなので、それを判断するのはかなり難しいだろう。原作のフィリップ・K・ディック的な悪夢世界であれば、数字の形の模様が目玉に刻まれていてもいいような気がする。

 

  • ジョイ

愛玩プログラムのジョイが現実の女性ではないからこそ、これでもかと見てる方をギュンギュンさせる。演じている女優さんがYouTubeの映像でラブ役の人と一緒にインタビューを受けているが、普段の姿も劇中の姿もほとんど変わらない。物語の後半に惜しげも無くおっぱいを晒してくれるが、割と小さめ。その辺も含めてプログラムとしてその所有者に可愛がられるための要素で固められていると思う。最後に出てくるときに髪が真っ青で目が黒いのは、その髪型からして恐らく前作のプリスのドールメイクを踏襲していると思われる。

 

  • ラブ

いつもどこか辛そう、あるいは怒っているようなウォレスの側近レプリカント。ウォレスの指令は忠実に守る。LAPDに来て検死官を殺してレイチェルの骨を奪って行く。前髪の形が前作のレイチェルと似ているのはわざとだろう。ある意味似た姿で出てくるというのは亡霊と言えなくもない。もしかしたらレイチェルのレプリカとして作られても良かったのではないか。旧タイレル社を案内するときの役割も前作で一番最初にデッカードに応待したのがレイチェルだった。物語の最後でKに殺されるのだが、首を絞められて死ぬというのがちょっと謎。生きている可能性が高いと思う。続編はないと信じているが、もしあったら出てくるかも。前述のインタビュー映像では全く印象が違う。役柄が役柄だけに当たり前だが大変優しげな美人。タガーを振り回して暴れるタイプには見えないが、劇中では見事に殺し屋を演じていた。

インタビュー記事はこちら


世界で最も美しい顔の女優、そば屋のオヤジに困惑/映画『ブレードランナー 2049』アナ・デ・アルマス×シルヴィア・フークス インタビュー

 

 

  • 署長

渋いおばさん。Kのアパートに来て酒を飲み、意味深なことを言う。と言うか、意味深に思ったんだけど、違うのかな?「奇跡の子」の存在を知り人類の脅威と考え抹殺する事をKに命じる。それを察知したウオレスの司令でラブに殺される。なんか、あっさりラブが侵入できてしまってLAPDの警備が甘すぎる気もするがそれもレプリカントならではということにしておこう。

 


音楽家 泉谷しげるが『ブレードランナー 2049』を語り尽くす!

そもそも、泉谷しげるブレードランナーのファンというのもなんか意外な感じがするが、その発言としてレプリカントは機械であり、人間は機械が好きなんだと認めてしまえばいいのにというようなことを言っていて驚いた。

 

  • 関連動画三本ユーチューブについて

それぞれ面白い。
1 サッパーが助けたのはやはり奇跡の子供なんだろうな。

www.youtube.com

2 ブラックアウトを起こしたのはNexus8?サッパーも8か。

www.youtube.com

3 ウォレスが新しいレプリカントの製造を認めさせるシーン。

www.youtube.com

人間の命令に絶対服従なところを見せる。
タイレルが作ったレプリカントの方が優れている?まさに失われた技術の方が優れているという伝説みたいなものか。

 

  • サントラ について

ハンスジマーの楽曲もやはり前作のヴァンゲリスのものを忠実に引き継いでいると思う。その上で現代風に仕上げてあり聞き応え十分。映画を観に行く前日にiTunesで購入して聴き始めたが、観終わってから聴くと感慨もひとしお。

 

これは押井守好きな私の贔屓目かもしれないが、映画版「攻殻機動隊」の続編である「イノセンス」はその前作との関係、画面の作り方などが今回の「ブレードランナー」と「2049」のあり方にかなり影響を与えているのではないだろうか。孤児院施設に行こうとしていたKが墜落してジョイが心配するシーンなんかは、ネットが繋がっていないスタンドアローンのプログラムだから全く役に立たないが、イノセンスでは天の声として草薙素子の声がバトーに聞こえる。キルゾーンに踏み込んでるわよ、と。ラスベガスにたどり着いたKが巨大な足の像の足元を歩いている時、イノセンスのシーンを思い浮かべてしまった。
もともとの「攻殻機動隊」はブレードランナーレプリカントの設定、記憶を移植する事ができるという部分を利用して「模造記憶」をかまされる、でも、偽の記憶を移植された人にとっては現実と変わらないという部分をうまく利用して別のカタルシスを作り上げていた。

 

  • この映画のテーマは?

我々はどこから来たのか?
我々は何者か?
我々はどこへ向かうのか?
という落書きが紀元前からピラミッドにあったらしい。ここに書かれている人間とは何か?我々は何者か?が今回の映画のテーマだろう。ちなみに「エイリアン・コヴェナント」では、我々はどこから来たのか?がテーマだったらしい。同じ監督が作った映画がそれぞれ人類の根源的な問いを共有している。そして、その問いは最終的に我々はどこへ向かうのか?を問うことになる。「2049」ではそれについても触れている。というか、人類は滅び、レプリカント(人間が生み出した存在)に取って代わられるということだ。これはエイリアン・コヴェナントでも同じで、アンドロイドのデビッド(ダビデ、ゴライアスという巨人を倒す人類と同じ名前らしい)が神々の黄昏(つまり人類の黄昏)というワーグナーの曲をバックに宇宙船のエンブリオ庫に入っていくシーンで終わっている。「2049」ではレプリカントが子供を本当に作れるようになれば、人類は取って代わられるということだろう。

 

シミュレーションの結果、ネアンデルタール人は我々人類が駆逐しなくても絶滅したという研究が先日ネットで紹介されていた。このシミュレーションの条件は、我々現生人類が絶えず供給されるということだが、勿論ネアンデルタール人だって再生産(つまり生殖)で増えるという条件は同じだと思うのだが、それでも住処を奪われて全滅するという結果だったらしい。この結果から考えるとおそらくレプリカントが供給され続ければ、我々人類は確実に滅ぶと思われる。
タイレルが作ったNexusシリーズは、生殖し再生産できる能力があったという設定で、物語の最後で出てくる女性が奇跡の子供(キリスト?)なのだが、地上にレプリカントを満ちさせようとしているウオレスは作れない。子供を探して殺させるというモチーフは、聖書のヘロデ王がキリストの誕生を知って2歳以下の子供を全て殺せという話と同じらしいのだが、やはりウオレスのやりたいことが今ひとつ謎。デッカードも別にオフワールド(地球から離れた植民惑星)に連れて行かなくても、本社で解剖でもなんでもすればいいと思う。この辺がエイリアン・コヴェナントを批判してる町山智浩がリドリースコットは生物学のセントラルドグマを理解していないという趣旨のことを言っていたがそうなのかもしれない。
今は生命をデザインすると言えば、遺伝子を操作する事だが、彼の中では前作にもあった通り目玉なら目玉、脳なら脳を設計し、それらを組み上げて人体を作るというイメージなのだろう。だからこそその機械仕掛けの人形が子供を産むというのが大きな飛躍に思えるのだと思う。必ずしも科学的に正しく理解してることが、面白い話を作る元になるとは限らないという例かもしれない。

  • 挿入歌「オルモスト・ヒューマン」

直訳すれば「だいたい人間」だが歌詞を聞いてると、この映画でテーマとなってる「誰かのために生きることが人間の本質」という事を行動で表して、ラストシーンに階段に腰掛けて空を仰ぎ雪を顔に浴びながら目を瞑るKの姿を示しているようだ。この曲はYouTubeのアニメ作品のラストに使われていた気がするが、アニメ的なキャッチーな楽曲になっているが聞いていると、本編のテーマを歌っている気がする。

 

BLADE RUNNER 2049 (SOUNDTRACK) [2CD]

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