常盤平蔵のつぶやき

五つのWと一つのH、Web logの原点を探る。

3DーCADソフトについて

 

 自著「家電OEMの会社で働くあなたのための参考書」からの抜粋記事です。

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コラム:3D-CADソフトいろいろ

 

ポリテクセンターで習ったCADソフトのほかに世の中にはたくさんのソフトがあります。その一部を紹介します。基本的に家電業界であれば以下に紹介しているソフトを知っていれば間違いないと思います。

 

Solidworks

開発元:ダッソーシステムズ http://www.solidworks.co.jp/

特徴:ミドルレンジ。ソリッドベース

 

私が一番長く使ったソフトです。最初に使ったのはバージョンはSolidworks 2004で、毎年順当にアップグレード板がでていました。ユーザーからの要望に細かく対応することで、使いやすさを毎年上げてきていました。私が最初に使い方を覚えたAutodeskInventorとスケッチとソリッドの扱い方はよく似ていたので、入社してすぐになれることが出来ました。

 

基本的に3Dモデルを作るためには、まず2次元のシルエットを作成する必要があります。2Dで図面を描く場合、基本的に三面図という一つの物体を3方向から見たものを描きますが、その内の一つを使ってまずスケッチを描き、それに厚み、深さを与えることでまず立体にするのです。これはこれから紹介するすべてのソフトに共通する考え方です。

 

Pro/engineer(現在はCreo

開発元:PTC http://ja.ptc.com/product/creo

特徴:ミドルレンジ。サーフェースベース

 

先ほどのSolidworksと違って、このソフトはsurface、つまり物体の表面を作成していくことで、形を造ることを中心にしたソフトです。普通現実にある物質は表面だけということはなく、内部にもすべてものが詰まっていますが、このソフトの世界の中では、内側になにもない状態でも形として成立します。

 

プレイステーションWiiUなどの3Dソフトで遊んでいて、あまりにもクローズアップしすぎたために、ポリゴンの内側に入ってしまい、気味の悪い思いをしたことがある人もいるかもしれませんが、このソフトの世界でも同様に内側ががらんどうでも形を示す情報としては成り立ちます。

 

よくよく考えてみると、金型を造るとき必要なのは面の情報なのです。鯛焼きの型は、外側の鯛の形しかありません。内側は皮とあんこがつまって、初めて鯛焼きは出来ますが、樹脂の成形部品も同じように、その空洞部分に樹脂が充填されて、部品ができあがります。そのための金型を造るためには、その面の情報だけがあればよいのです。

 

実際、本当にCAV側とCORE側の面の情報しか扱わないソフトもあったようです(I-DEASなど)。金型制作、樹脂部品に特化したCADだったのでしょう。現在は樹脂部品だけでなく、ほとんどすべての部品を3Dで作成して「デジタルモックアップ」を作成します。自動車メーカーのマツダでは、新車開発で、完全な3Dのもデルを造って、それによるシミュレーションや構造解析などをおこなって、開発期間を短縮しているようです。

 

Inventor

開発元:Autodesk http://www.autodesk.co.jp/products/inventor/overview

特徴:ミドルレンジ。ソリッドベース。

 

私が、職業訓練学校で習ったソフトは同じAutodesk社のMechanical Desktopという3D-CADソフトでしたが、それがバージョンアップしてInventorになりました。操作体系は最初に説明したSolidworksとよく似ています。実はAutodesk社は2D-CADの分野ではAutocadによって、ほぼデファクトスタンダードの地位を築いていたのですが、その分3D-CADの分野では出遅れてしまったようです。

 

アメリカではPro/Engineerがまずシェアをとって、Solidworksがその後を猛追しているという状況でした。そこでAutodeskとしては、Solidworksの操作体系をかなり参考にしたようです。逆にSolidworksの3Dを作成する過程で造るスケッチの描き方はAutocadの操作に近い部分があります。

 

そういう事情もあり、Solidworksを参考にした方がよいと判断したのではないでしょうか?しかしこれは2004年当時の話で、ソフトウエアはどんどん進化しますので、今はどうなっているかわかりません。最近までInventorを使っていた人の話では、やはりSolidworks寄りのようです。

 

Solidedge

開発元:Seimens http://www.plm.automation.siemens.com/ja_jp/products/solid-edge/

特徴:ミドルレンジ。ソリッドベース

 

2D-CADだけの時代には、どのようなコマンドを使ってその図形を書いたかという情報、つまり作業の履歴は残りませんでした。しかし、これまで紹介してきた3D-CADのソフトは、その形状をどのように造ったかが、すべての作業の履歴が残っています。したがって、どこかの段階で間違えたとか、またはここの大元の寸法を変更したいというような時は、そのコマンド部分の履歴に戻って修正することが可能です。

 

それぞれのコマンドはそれ以前のコマンドの実行を前提にしていますので、平面のないところに穴をあけるということは出来ないため、作業の順番には気をつける必要がありますが、いったん形を造ってしまえば、まるでタイムマシンで過去に戻って歴史を改編するように、その時点ではまだ出来ていない形を持ち込むことも可能です。

 

ところがこのSolidedgeというソフトは、そのように履歴を残して作業する「オーダード」モードと別に「シンクロナス」モードという、履歴に関係なく作業をどんどん積み重ねていけるモードを持っていて、その二つのモードを自由に行き来できるのです。実際には自由にといっても、いろいろな制約があり、そのモードの切り替えは簡単ではないのですが、これまで紹介したソフトにはない特徴です。

 

最近では最後に触れますが無料の3D-CADソフトが出てきていますが、それらのソフトはここで言う「シンクロナス」モードと同じで履歴は残らないので、どこかの段階で間違えたからそこから修正し直したい、ということができません。3Dを作り慣れてくると、必ずしも履歴で直さなくても、様々なコマンドを駆使できるようになって、かなり自由に形をいじれるようになるのでどちらのモードがよいとは必ずしもいえません。

 

また、このソフトは板金(シートメタル)専用のコマンド大系もあり、非常に板金ものの部品を造るのがやりやすいです。Solidworksにも板金用のコマンドはありますが、このソフトにはフランジ専用のコマンドが用意されていたり、完成状態の形状から展開状態を簡単に造ることが出来ます。

 

CATIA

開発元:ダッソーシステムズ http://www.3ds.com/ja/products-services/catia/

特徴:ハイエンド。ソリッドもサーフェースもOK

 

正直、このソフトは使ったことがありませんので、使用感についてはコメントできませんが、現時点で値段も機能も最高クラスの3D-CADソフトです。自動車メーカーのTOYOTAが使っていることで有名です。

使用していた人の話では、とにかく自由度が高いそうです。そしてサーフェースとソリッドを両方扱えるそうです。

 

ハイエンドということで、かなりそれを走らせるCPUもある程度強力である必要がありますが、それでも、ポータブルのワークステーションで動かしているのを見たことがありますし、最近はPCの性能が昔から比べると著しく進歩しているうえに、値段もこなれていますので、問題ないのでしょう。

 

余談ですが、昔は2DCADであっても、専用のワークステーションが必要で国産のPCではNECのPC-9800シリーズにもCADなどを専用に使うH98シリーズというものがありました。CADの細い線や拡大縮小などグラフィック環境を強化したハードが必須だったのです。また、Windows3.1時代にもUNIXでしか動かないなど、CADを導入するにはハードへの投資が必要でしたが、むしろ今はソフトの値段に比べたらハードはおまけみたいなものです。

 

Rinocerase

開発元:アプリクラフト http://www.rhino3d.co.jp/

特徴:デザイナー御用達 Mac版もある。

 

これも、私自身は使ったことはありませんが、世の中にはCADと関係なく3Dモデルを作成する仕事があります。それらのデータはゲームや映画などのCG表現に使用されます。そのためのソフトとして有名なものにShadeMayaがありますが、これらのソフトの特徴はノンスケールであることと、機械や建物だけでなく自然物(人間や動物、山や川、木や森など)を作成することも視野に入れていることです。

 

このライノセラスというソフトも、どちらかとそういう形の作り方をするソフトですが、それを最終的にCADに受け渡す事を想定してデータを造っている事が特徴です。Solidworksにはライノセラスのデータを直接読み込む機能があります。実際に使用したこともありますが、あまり再現性がいいとはいえませんでした。しかし、モデリングをする上でひつようなサーフェースさえ持ってくることが出来れば、そこから形状を起こしていくことが出来るので、それだけでかなり作業がやりやすくなります。

 

・その他の無料3D-CADソフト

 

最近はSaaSSoft wear as a Service)という言葉通りソフトはタダで提供してハード(3D-printer)などで収益を上げようと言う動きもありますので、無料の3D-CADソフトもいくつか出てきています。では逆にそれらが仕事として使用できるか?といわれると私は疑問を感じますが、しばらく前に個人で3Dモデリングを請け負う仕事を立ち上げた方が、無料の3D-CADソフトを使われていました。やり方によってはプロの使用にも耐えるのかもしれませんが、現時点ではこれまで紹介してきたような商用ソフトが一気に無料ソフトに置き換わるという事はないと思います。

 

 ↓↓↓上記の内容は拙著からの抜粋です。ご興味をもたれた方は是非!

家電OEMの会社で働くあなたのための参考書